この記事ではインドネシアの環境問題、特に海洋ゴミについてまとめています。前回のジャカルタ周辺のゴミ問題に続き、今回はプロウスリブ、バリ島、ロンボク島を取り上げてそれぞれの海の様子を紹介していきます。インドネシアが好きな方や環境問題に関心のある方にぜひご一読いただければと思います。
もくじ
はじめに
都市部のゴミ問題については別記事にてすでに紹介をしましたが、なかなかのインパクトがある内容だと思っています。そして、今回もきっと期待を裏切らない(?)インパクトになろうかと思います。
海洋ゴミの問題は非常に複雑です。というのも、同じ国であっても、場所が違うだけでゴミの有無が全く違う状況になるからです。インドネシアというとバリ島を中心に綺麗な海の印象を持つ方が多いでしょう。ところが、バリ島であっても知られていない一面があるのです。この記事ではぜひその点にも触れてみようと思います。
都市部沿岸の海洋汚染
別記事でも一度触れましたが、北ジャカルタの沿岸部はかなり汚れた状態にあります。ここで改めて確認していただきましょう。百聞は一見に如かず、です。
この写真を撮影した場所はタンジュン・パシール(Tanjung Pasir Beach)という場所で、ジャカルタより西に20kmに位置します。20km離れていてもこのゴミの量です。毎日たくさんのゴミが海洋ゴミとして河川から流れ出ている様子が分かっていただけるかと思います。水も濁り、砂が黒く染まっています。各家庭から流れ出る洗剤や油が垂れ流しになっていることが原因の1つです。インドネシアでは下水施設がまだまだ整備されていないのです。
プロウ・スリブ(Plau Seribu)
ジャカルタ北部に位置するプロウ・スリブ。プロウ・スリブとは現地の言葉でPlau Seribuと書きます。Plauは島、Seribuとは数字の千を意味します。つまり、「千の島々」という意味ですね。発音はプラウ・スリブでも間違いではありません。地図を見てもらうとよく分かりますが、大小様々な島が点在しています。これら一帯がプロウスリブと言われるエリアになります。
ウントゥング・ジャワ(Untung Jawa)へ!
数ある島々のうち、今回はウントゥング・ジャワ(Untung Jawa)を取り上げます。たまたまこの島に行っただけなのですが(笑)。ジャカルタ北部にあるいくつかの港から渡航できるこの島は、海外からの観光地というよりは、現地の人がレジャーを楽しむために通う島という感じです。
ウントゥング・ジャワへの渡航方法と時間、料金
島への渡航時間や料金などについて見ていきましょう。ムアラ・アンケ港(Pelabuhan Muara Angket)を例として紹介します。この港から渡航可能な島は多いので、それぞれ時間や料金が異なります。当該サイトは日本語訳が可能なので、利用の際には確認してみてください。
上記の公式サイト(2023年10月現在)によると、渡航時間は30分程度でいくつかの島へ渡航可能です。「パリ島」という島があり、片道で「IDR 215.000,-(約2,150円)」、ウントゥング・ジャワだと「IDR 175.000,-(約1,750円)」とあります。比較的安価なので利用しやすいと思われます。
以下、ホームページの画像になります。画像をクリックすると料金表のページにジャンプします。
左下の写真はジャカルタ北部に位置するアンチョール(Ancol)という場所です。遊園地などのレジャー施設があり、港に行くためには入場しなければなりません。そのための入場料としてIR25,000-(約250円)ほど支払う必要があります。
中央と右下の写真が船の発着点となる場所です。埠頭なのでそれほど迷うことはないでしょう。地図をクリックすると、GoogleMapで場所が表示されます。
ウントゥング・ジャワの景観
ウントゥングジャワってどんなとこ?
ウントゥング・ジャワは、沖縄の離島のように数時間あれば1周できてしまうほどの大きさです。ネットには右側のような写真がたくさん掲載されています。一見すると、とても綺麗に見えます。何より、記事の最初に紹介した、ジャカルタの沿岸部とは比べるまでもありませんね。
しかしながら、やはり実際に現場を見るということは大切なように感じます。なぜなら、潮流の関係で、同じ島の中でも綺麗な場所とそうでない場所が出てくるからです。もちろん、写真のように、港の周辺であれば水はある程度透き通っていますし、海の底が見えて魚が泳いでいる様子も見て取れます。ただ、日本人が考える「キレイな海」と一致するかどうかといえば、断じて「❌(N O!!!)」ですね。
ウントゥングジャワの裏側
それでは、ウントゥングジャワの裏側を見ていきましょう。まずこの島にはマングローブ林が広がっているのですが、そこにもプラごみが流れ込んでいることがわかります。
そしてマングローブ林を進むと、この島が抱える問題を目の当たりにします。漂流ゴミの漂着点となる場所です。
この場所では、日々数名のスタッフが何時間もかけてゴミを回収しています。そしてゴミが一定量溜まると、車でゴミの収集場へと運ぶ作業を繰り返しているのです。
先程の砂浜の写真とは全く違う光景で驚かれる方も多いでしょう。ところが、砂浜からわずか1キロ先の海岸でこのような景色が広がっているというのは事実なのです。
インドネシアが誇る島
ウントゥング・ジャワに加えて、ロンボク島とバリ島の海についても少し触れておこうと思います。インドネシアが誇る島の筆頭と言って良い2つの島ですが、実は同じような問題を抱えているのです。
ロンボク島
ロンボク島はバリ島の東隣に位置する島です。島の北西に位置する「ギリ」は、ダイビングで世界的にも有名な場所となっています。そのほかバイクの世界選手権が行われるなど、世界各地から人々が訪れる場所です。
ギリの様子
ダイビングで有名なだけあって、海は本当にキレイです。下の地図をクリックすると、GoogleMapで場所を確認することができます。
シュノーケリングやウミガメを見たりするアクティビティに人気があります。また、サーフィンを目的とする人も多いようで、この場所なら日本人が求める「キレイな海」に出会えるはずです。
ロンボク島西海岸の様子
ロンボク島の中心地である「マタラム」(赤い囲み線)は島の西部に位置し、ギリから南に30kmほどの場所です。高層ビル群があるわけではなく、あくまで地方の中心都市でこじんまりした街と言えます。その街は海に面していますが、その海辺はギリとは全く対照的な様相です。
写真では少しわかりにくいかもしれませんが、砂浜は黒ずんでいて、ギリとは明らかに違います。砂浜にはゴミが打ち上げられていて、飲み物のプラごみやビニール袋のようなものが散見されます。
最後の1枚は、砂浜の隣に隣接されている広場で、子供たちが素足でサッカーをしています。ここでもあたり一面にゴミが落ちている様子がおわかりいただけるでしょう。どちらかというと、インドネシアではギリのような場所の方が珍しいのです。
バリ島
さて、次はバリ島です。バリ島は空港の北に位置するデンパサルやウブドが有名でしょうか。こちらは言わずもがな、観光客が多い場所です。一方、あまり観光客が訪れない東海海岸もとてもキレイな海が広がっています。
バリ島の東海岸
東海岸のパダン・バイ(Padan Bai)にはロンボク島からの船が発着する関係で訪れましたが、この場所も海はとてもキレイです。透明度が高く、メインのビーチを取り囲むように小高い丘が連なっています。寺院もあるため、バリ島ならではの景色を楽しむことができます。
バリ島のゴミ問題
バリ島にはキレイなイメージしかない人も多いのではないでしょうか。しかし、実際には思った以上にゴミが目立ったという人も少なくありません。例えば街中を歩けばポイ捨ても普通にありますし、水質・砂浜ともに場所によっては汚れているように感じることあるでしょう。
「スンガイ・ウォッチ(Sungai Watch)」というグループバリ島で活動しているのですが、彼らのことを知ってもらうとバリ島の現状が理解してもらえるでしょう。
「スンガイ・ウォッチ(Sungai Watch)」とは、バリ島を中心としてインドネシア各地で清掃活動をしているグループです。下の画像をクリックすると、グループの公式サイトにアクセスできます。この画像だけでもわかるように、バリ島でも川や路地裏といった様々な場所で廃棄物が問題となっているのです。
もしもバリ島にキレイなイメージしか持たない人がいれば、残念に思うかもしれませんね。ただ、ウントゥング・ジャワやロンボク島と同様、これが事実なのです。
おわりに
今回の記事は海洋汚染の事実を知ってもらうためにまとめましたが、読んでみた感想はいかがだったでしょうか?
日本人が観光で訪れる場所というのはやはり「キレイな海」「美しいリゾート」になるわけですが、その対岸や数十キロ離れた場所に目を向けると、全く違った光景が広がっているということを知っていただけたのではないでしょうか。
仮に、このまま途上国で対策がなされないままだと、いずれはキレイだった海が姿を変えてしまう可能性があることは容易に想像できます。別記事にて紹介予定ですが、ロンボク島ではゴミ処理場が不足していて、さらにゴミ処理場が建設される予定とのことです。
「観光とゴミ」
日本人にとって他人事でない事態がインドネシアの観光地でも観光地でも起ころうとしています。