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インドネシア語の文法構造ってどんなの?〜語学その4〜

 この記事ではインドネシア語の文法構造(動詞の活用)について紹介していきます。以前、「インドネシア語は簡単ではない」ということ(別記事)をお伝えしましたが、今回は実例を挙げながらインドネシア語がどういった言語なのかを見ていただけたらと思います。

 【別記事】インドネシア語って難しいの?〜語学その1〜

 

はじめに

 今回の記事のテーマはインドネシア語の文法構造(動詞の活用)です。どうしてこのテーマに取り上げるのかというと、インドネシア語の動詞には「語幹」というものがあって、英語でいう動詞の原型にあたります。この動詞は伝えたい内容によって活用方法が変わるのですが、それが英語と大きく異なっていて、英語を学んできた私たち日本人からするとかなり曲者という感じです。実際に例を挙げていきますので、ぜひご覧いただき、これからインドネシア語を学ぶという方は参考にしていただければ幸いです。

 

インドネシアの動詞を知ろう!

 先ほどもふれたように、インドネシア語の動詞には「語幹」というものがあります。それが様々な形に変化することで文章の意味が大きく変わってくるのです。今回は「住む」という単語を使い、どんな風に形が変わり、かつ意味が変わっていくのかを知っていただきたいと思います。

 

動詞の語幹とその活用〜語幹〜

 インドネシア語で「住む」という言葉は「tinggal(ティンガル)」が用いられます。典型的な文を紹介すると以下のようになります。

 Bapak saya tinggal di Jakarta.(私の父(Bapak saya)はジャカルタ(di Jakarta)に住んでいます(tinggal)。)

 英語でいう動詞の原型であり、短めの簡素な言葉なので日常会話の中でも頻繁に用いられます。「住む」のほかに「残る」「とどまる」という意味もあります。インドネシア語を勉強する際にはこのような「語幹」をたくさん知っておくと今後の勉強が捗ります。語彙を増やしたければ、まずは語幹からしっかりと勉強していきましょう。

 

me+動詞

 では次に動詞の活用パターン1「me+動詞」を実際に見てみましょう。語幹である「tinggal」をこの形に当てはめるとどうなるのでしょうか。

 Teman saya meninggal tadi malam(私の友達(Teman saya)は昨晩(tadi malam)亡くなりました(meninggal)。)

 ※「me+動詞」に動詞を入れる場合、動詞の頭文字「t」は「n」に変わると言う決まりがあり、「meninggal」となります。

 

 もともと「tinggal」は「住む」という意味ですが「me+」の形になると、なんと意味が全く変わってしまうのです。あえて「tiggal」を使ったのはこれを示したかったからなのです。インドネシア語を学ぶのであれば、単語によっては大きく意味が変わってしまうということを知っておくべきでしょう。ちなみに、このように大きく意味が変わる単語は多くはありません。あくまでも極端な例ですので、多くの単語は「me+動詞」の活用でもそれほど大きく意味は変わらないものとして勉強してください。。

 

me+動詞(自動詞)+kan

 次は動詞の活用パターン2「me+動詞+kan」です。

 Tamu dari Indonesia meninggalkan Tokyo tadi pagi.(インドネシアからの客(Tamu dari Indonesia)は、今朝(tadi pagi)東京を後にしました(meninggalkan Tokyo)。)

 この場合に、「tinggal」は他動詞となって目的語(東京)をとります。そして意味は「後にする」「去る」となります。語幹は「住む」という自動詞であるのに、「me+動詞+kan」だと他動詞となるのです。その場合、意味は「・・・を〜する」「・・・を〜させる」となります。

 

そのほかの活用

 「tinngal」という自動詞を用いて例を示しましたが、動詞が他動詞だとまた違った文構造になりますので、ここで併せて紹介しておきましょう。

 

me+他動詞+kan(その1)

 例として「gosok(磨く)」と言う単語を使いましょう。

  Dia menggosokkan sikat pada periuk.(彼女(Dia)は鍋(periuk)をたわし(sikat)で磨きます。)

 

 このパターンの活用では「〜で・・・する」という意味となります。ちなみにこの文章と同じ意味を持つ文章は他にも作ることができます。それが次の文章です。

 Dia menggosok periuk dengan sikat.(※dengan(「〜で」を意味する。))

 

 2つの文章を比べると、道具を表す単語を目的語とするかどうかに違いがあります。これは英語には無い活用です。英語を知っていれば知ってるだけ苦労するというのが分かっていただけるはずです。

 

me+他動詞+Kan(その2)

 次に「baca(読む)」という単語を使います。

  Dia membacakan anak dongeng.(彼女(dia)は子供(anak)に童話(dogeng)を読んであげました(membacakan)。)

 ※「me+動詞」に動詞bacaを入れる場合、meにさらにmを加えるという決まりがあり、「membaca」となります。 

 

 この文章は2つの目的語をとります。上の文章の語順は「主語(Dia)+me他動詞kan(Membaca)+間接目的語(anak)+直接目的語(dongeng)となっています。これと同じ意味を持つ文章をもう1つ紹介します。

 Dia membacakan dogeng untuk anak(彼女は(Dia)子どもに(untuk anak)童話を(dogeng)読んであげました(membaca)。)

 

 untukは英語でいう「For」にあたり、「〜のために」という意味があります。インドネシア語ではこのような単語の意味も含めた動詞の活用になるため、動詞の活用には注意を払う必要があります。

 

おわりに

 インドネシア語の文法構造(動詞の活用)について紹介してきましたが、なんとなく、インドネシア語の構造が分かっていただけたでしょうか?

 インドネシア語を学ぶ際に「語幹」はとても大切な単語となります。使い方次第で大きく意味が変わったり、文章構造が変わったりしますが、単語の意味合いが変わる場合にはいっそう注意が必要です。

 いくつか文例も示しましたが、現地で使うとなるとこれらのパターンを使い分ける必要があります。難易度が低く無いことは容易に分かるはずです。もしあなたがインドネシア語を勉強していくならば、語彙を増やすのは当然ですが、それとともに文章構造を理解しておく必要があるのです。

 そして何より、現地の方がカジュアルな会話をする時には、話し言葉として教科書のような言葉は使われません。これも改めていう必要はないことなのですが、話し言葉では動詞の活用も思っていたのと違う(簡略化されること)なんてことはザラにあります。しかし、それらを理解するためには、基礎・基本が分かっていなければなりませんので、焦らずじっくりと基本的な内容の習得に励んでいただきたいと思います。

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