環境教育 青年海外協力隊

インドネシアの環境問題〜ポイ捨て問題と対策〜

 この記事ではインドネシアで問題になっているポイ捨ての現状とポイ捨てによる街への影響について紹介します。アジアで頻繁に取り上げられる廃棄物の問題の1つとしてご覧いただければと思います。

はじめに

 廃棄物の処理方法を中心にアジア各国で多くの環境問題が報じられています。インドネシアも例外ではなく、ゴミ問題、ひいては環境問題が深刻化しているのが現状です。首都移転の話も、首都ジャカルタの地下水を過剰に汲み上げていることによる地盤沈下が原因とされていますが、このほかにも開発に伴う森林の過剰伐採、排水処理施設の未普及など多くの問題を抱えているのです。ここで全てを紹介することは難しいですが、ゴミ問題のいったんとして街の所々に見られるポイ捨ての現状や人々のゴミ処理に対する考え方について知ってもらえればと思います。

ポイ捨ての現状とゴミ処理の問題

 さっそくインドネシアの首都ジャカルタとその周辺都市の様子を見ていきましょう。観光で訪れる場所はキレイに清掃されている場合が多いですが、現地の人々が生活する場所というのはどちらかというとこれから紹介する写真に見られるような環境が多いです。

ポイ捨ての現状

 インドネシアの街を歩いてみるとすぐわかるのですが、残念ながらポイ捨ては「いつもの光景」としてみられるものです。ペットボトルや露店で使用されるプラ袋、生活で不要になった不燃ゴミまで様々なものが道端に捨てられています。習慣化してしまっていて、そこも国内では大きな問題となっています。

 このポイ捨ての影響は街の中だけにはとどまりません。河川へのポイ捨てや流出もあるので、町中の水路は至るところにゴミが溜まってしまいます。水路は整備されているわけではないので、キレイに流れていくなんていうことはありません。ゴミが溜まってしまい、悪臭が漂う場所もあります。

 この流れだと最終的に海へと流れていくことは容易に想像できますね。そしてその光景がなかなか強烈なのです。まずはジャカルタ北部にあるアンチョール(Ancol)という場所の写真を掲載します。ここは遊園地や海浜公園などが整備されていて週末は多くの人々で賑わいます。開発は進みましたが、水路は溜池のようになっていて、実際に写真を見てもゴミがたくさん溜まっていることがわかります。

【写真左】奥に見えるのが遊園地Ancol Dunia Fantasy。観覧車やジェットコースターがあります。手前には水路があります。

【写真右】ポイ捨てされたゴミが溜まっています。水の流れもなく、意図的にゴミが回収される気配もありません。

 

 続けてジャカルタ北西部にあるタンジュン・パシールという海岸の写真を掲載します。キレイな海に近い場所で生ま育った筆者には、東京の海でも耐えられませんでしたが、ここはもう言葉が出ません笑。ゴミの量はさることながら、水の色もかなり濁っていて、日本の海で感じられる潮の香りもありません。砂浜=海水浴のイメージを持っている人にとってはかなりショッキングな光景でしょう。他の途上国も同じようなものだと聞いたことはありますが、ごみ問題の深刻さを感じずにはいられません。

 

ゴミ処理の問題

 インドネシアでも長い間対策がとられなかったわけではありません。ポイ捨てへの対策として街中にはたくさんのゴミ箱が配置されています。基本的にオーガニックごみ、ノンオーガニックごみ、リサイクルごみの3種類です。ただ、ゴミ回収のシステムが確立されていないこと、そして分別の意識がまだ浸透しきっていないということもあってゴミ箱が3種類あることの効果は得られていないと言っていいでしょう。

 上の写真は主に学校で使用されているものです。街中でも至るところにゴミ箱は見られますが、回収システムが確率されていないので、ゴミが溢れかえっていたり分別が全くされていなかったりとゴミ箱設置の意義が十分に浸透していないことは明確です。

教育の効果

 ゴミ箱の設置と同様、インドネシアで問題となっていたポイ捨てへの意識改革も進められています。それが「学校での環境教育」です。特定の自治体ではすでに1つの科目として「環境」を実施されていて、日本のNGOも複数介入しています。ゴミ処理のハウツーや日本の廃棄物処理の知識自体はすでにインドネシア国内で認知されていると言っていいでしょう。

 

環境教育の実施状況

 科目「環境」は全ての学校で教えられているわけではありません。小学校と中学校の義務教育課程で学ぶことになりますが、基本的には選択科目の中の1つという位置付けです。ただ、専門的な教員がいるのではなく、主に理科の先生方が生物学的なアプローチで授業を担当していることが多いようです。学校の中には池や庭・菜園などが設置されていることが多く、体験的な学習ができるケースが多いです。大きな学校では動物の飼育も行われていて、日本と遜色のない設備が整っている学校も多いです。ただ、途上国ということもあって、例えば理科の実験で必要な器具や薬品などが用意されている学校はほとんどないので、実験ができないということは1つの科目として物足りなさも感じます。体験的な学習が十分に行われないということですね。実はこの点が今の学校現場にとっての課題となっているのです。

環境教育の成果

 市民の方に話を聞く機会がありました。子どもたちに関しては、ゴミ処理の知識や環境への配慮が必要という態度がある程度身についてきているようです。一方で、大人の世代になるとまだまだ知識の啓発が必要なようです。大人の背中を見ながら子どもたちは大きくなっていくのですから、大人こそ環境への態度を改めなければならないのですが、、、。インドネシアの産業を支える世代がそのような状況なので、インドネシアがゴミ処理問題に踏み込んでいけるのは、あと十数年待たないといけないように思われます。

 しかし、子供たちの活動を見ていると積極的に創造的な活動を取り入れようとしていることがわかります。植木鉢にデザインを施したり、大人への啓発活動も子供たちが行っています。先生方の協力もありますが、使えるものは使う、自分たちの生活環境をより良くする、といった活動が見られるのです。今はまだ成果が出ているとは言えませんが、もと教員の筆者から言わせてもらうと、将来が楽しみと思わせてくれます。市民の中には自分の家の周りを自ら清掃する方もいます。このような人が増えると、インドネシアも大きく変わっていくことでしょう。

 

おわりに

 ジャカルタ周辺や近隣の学校の写真をお見せしながら、インドネシアの、特にジャカルタ周辺のごみ問題について紹介してきました。深刻な環境問題を抱える国の実態を把握していただけたでしょうか。本質的な問題はまだまだ山積みですが、インドネシア国民の取り組みは少しずつ変わってきていますので、それを知っていただけると幸いです。また、インドネシアにもっと関わりたいと思ってくれる方が増えると嬉しいですね。

 現在、筆者も学校を訪問して新たな授業方法を提案している段階にあります。さらに環境教育の理念が浸透し、多くの方が環境に配慮した取り組みができるように邁進していきたいと思います。

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