インドネシア・ライフ

ラマダン(断食月)が始まります!

 この記事ではイスラム教徒のラマダン(断食)について紹介しています。イスラム教の断食はよく知られていますが、イスラム圏で実際に生活してみると様々な場面で日常生活に大きな支障があることに気づきます。イスラム圏に旅行に行くなんて人もぜひ参考にしてみてください。

 

はじめに

 インドネシアでの生活が2年目に突入しました。色々なことに慣れてきた矢先ですが、その慣れを大きく揺るがす期間がラマダンです。この期間はムスリムにとって特別なもので、宗教的な意識が高まる時期とも言われます。

 その一方で、仕事を含めたあらゆる生活習慣が様変わりします。他教徒からすると、生活する上で困ることが多いのですが、その点についても紹介していきます。

 

 

ラマダンについて

 まずラマダンについて確認しておきましょう。イスラム教の断食は聞いたことがある人も多いかもしれませんね。ただ、実際に生活してみたり、旅行するなんてときも考慮した方がいいことが多いのです。バリ島はヒンドゥー教の島と言われますが、インドネシアがイスラム教を国教とする国であることには最新の注意を払ってくださいね!

 

ラマダンって何?

 ラマダンとは「断食月」を指し、1年間のうちの一定期間は飲食を断つというものです。多くの方が勘違いされるのですが、断食をするのは1日のうちの日の出から日没までの間で、何日間も飲食を断つわけではありません。

 1日のルーティンでいうと、ムスリムは朝のお祈りが始まるタイミング(夜明け)で食事を取りますが、そのあとは日没まで一切の飲食を断ちます。「飲食」なので、食べ物はもちろん、水分も飲まないということになります。ただし、例外はしっかりとあって、高齢者の方や病気の方、妊婦、子どもなどは断食する必要がなく、諸々の配慮がなされています。そして信仰心も個人差がありますので、断食月だからといって全てのムスリムがまったく同じような食事制限をするというわけでもないのです。かえって難しいのはこういうところなのです。

 

ラマダンっていつ?

 ではラマダンはいつ頃始まるのでしょうか?

 今年、2024年は3月11日に開始となり、4月9日までの1ヶ月間とされていますが、2022年は4月1日から4月30日までといったように、毎年同じ時期に設定されているわけではありません。これはイスラム暦によって設定されているためで、太陽暦を用いているので毎年同じタイミングにはならないのです。細かな日程については宗教省の通達によって決定されます。イスラム圏への渡航を予定している人たちは、日本大使館からの情報やインドネシアの宗教省の通達を把握しておく必要があるのです。

 ちなみにイスラム国家でも断食月のスタートには若干の違いがあるとの話もあります。全てのイスラム国家の情報を把握しているわけではないのですが、もしそうだとすればイスラム国家への渡航を予定している人は細心の注意を払わなければいけません。あらかじめしっかりと確認をしておきましょう。

 

ラマダン期間の街の様子

 いざラマダンが始まったら街の様子や、人々の生活はどのように変わるのでしょうか。

 結論を先に言ってしまうと、一気に活気が無くなります!!

 そもそも飲食ができないので、人々は体力をあまり使わないように生活します。そんなことなので、日中の移動も最小限のものとなり、飲食店もお客が多くないのでそもそも開業しない店舗が増えます。営業するにしても朝の時間帯もしくは夕方以降といったように、普段利用していた飲食店で昼食が食べられないなんてことが多いです。一般的な企業の場合だと、早めに仕事を切り上げたりするところもあるようです。

 学校でも同様の配慮があります。小学校では休みになるところがありますし、中学校でも朝の2〜3時間で授業を終えて子どもたちは帰宅します。これらの動きを踏まえると、昼食後にあたる時間帯というのは、人の動きが本当になくなってしまうということになります。

 生活の変化は道路の交通量からも察しがつきます。下の写真はいずれも普段利用する通勤路なのですが、左が通常時で、右側がラマダンの期間です。どちらも同じ朝の時間帯にも関わらず圧倒的に交通量が違います。人の動きが明らかに普段と異なるということが分かっていただけるでしょう。

 

ラマダン期間中の日没後

 さて日没を迎えると、人々はやっと飲食することができます。夜の間は普段の生活と同じなので、昼間に我慢していた分だけ、外が少し騒がしくなる印象があります。ただ、面白いことに、このラマダン(断食)期間というのは人々の体重が増加するタイミングなのだそうです。

 「断食してるのに?」と思われる人が多いでしょう。実は断食の反動が大きく、夜間の飲食量が増えてしまうため、総量で言うとかえっていつもより食べてしまうらしいのです。そして夜遅くまで起きていることも多いようで、それも影響しているとのこと。ムスリムの生活って何だか不思議だなと思ってしまいます。

 

なんで断食するの?

 ではそもそもなぜイスラム教徒(ムスリム)は断食をするのでしょうか?

 ざっくりと言ってしまえば「身を清める」ということらしいのです。悪口や揉め事をはじめとし、あらゆる欲望(食欲や性欲)も絶たなければなりません。そのため、断食はもちろんのこと、性交渉も禁止とのこと。はじめに、「宗教心が高まる時期」という表現を使いましたが、こういうことのようです。

 友人にも断食の目的を聞いてみたところ、「満足に飲食ができない状態を経験することで、貧しい人と同じ生活をするんだ」と言っていました。「食欲」や「飢餓状態」に耐えるだけでなく、イスラム国家としての「連帯感」を強めるといったことも関係がありそうです。

 

気をつけなければいけないこと

 こういった事情から私たち他教徒も配慮すべきことがあります。

 それは、断食月を迎えて「様々なことに敏感になっている人たちを逆撫でするようなことは慎む」ということです。お腹が空いている人の前で好き放題食事をとっている姿を見せるのはやはり彼らに対して敬意を欠いた行為と言えます。

 また、禁欲生活をしている方々に女性が肌をオープンにした普段着で街中を闊歩するのもいかがなものかということを考える必要があります。ムスリムの女性の多くが、「常にヒジャブを着用している」ということとその意味を考えて行動しなければなりませんね。ファッションは自由であるということは広く認識されていることで異論はありませんが、インドネシアに来ている身ならば、そういったことには配慮が必要だということは忘れてはいけないと感じます。

 

  

おわりに

 今回は「断食」について紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

 話には聞いたことがある人も多いかと思いますが、実際にはかなりセンシティブだし、ただの「慣例」では済まされないほどムスリムにとって大事なことだということが分かっていただけたのではないでしょうか。

 この期間を終えるとレバランと言って断食明けの祭礼が執り行われます。その期間は1年間の中で最も盛大なものとなります。このことからも彼らにとってこの期間がどれほど重要なものかは容易に想像がつくはずです。インドネシアに関心のある方はぜひ頭の片隅の置いておいてくださいね。

 今回はちょうど断食を迎えたタイミングで投稿となったのでテーマに取り上げましたが、レバランについても紹介していこうと思います。お楽しみに!!

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