インドネシア・ライフ 環境教育

コピ・ルアクとその裏側〜価格高騰で起こった社会問題〜

 この記事ではコピ・ルアク(Kopi Luwak)とその生産過程にある問題について紹介しています。今回訪問したのはインドネシアのバリ島ウブド。コーヒーが好きな方はもちろん、生産プロセスに関心のある方、コーヒー生産のあり方に関心のある方にぜひご一読いただきたいです。

 

はじめに

 実は「大のコーヒー好き」である管理人。インドネシアに滞在しているということもあって、かねてからバリ島に、そしてウブドのコピ・ルアクを飲んでみたいと思っていました。幸いにも仕事の都合がついたため、さっそく飛行機のチケットを予約してバリ島へ行ってきました。いざ行ってみるとさすがはバリ島、おしゃれなカフェがたくさんです。海岸沿いのデンパサールから高原地帯のウブドまで観光客で賑わっています。今回の記事は、「コーヒー豆の生産過程の見学」から「お得な試飲」までできるカフェで得た情報を中心にまとめています。おすすめのカフェも別記事で紹介していきますので、そちらもぜひご覧ください。

【別記事】 バリ島ウブドのおすすめポイント

  

世界中で有名なコピ・ルアク

コピ・ルアク、知ってる?

 コーヒー好きなら聞いたことがない人はいないであろうコピ・ルアク。有名である理由の1つには「世界で最も高価なコーヒー豆」という事があります例えば、東京の高級ホテルで飲もうとすれば一杯当たり数千円。普通のコーヒーの10倍ほどすることもあるそうです。初めてその名前を聞いた人であれば「何がそんなにすごいの?」と思うことでしょう。価格が高いのは希少価値が高いからです。もちろん需要も高いということになりますが、味や香りといったところでコピ・ルアクを求める愛飲家がたくさんいるということです。

 

コピ・ルアクの由来

 さてコピ・ルアク(Kopi Luwak)ですが、この言葉はインドネシア語になります。コピはKopi=コーヒーです。そしてルアクですが、これはLuwak=ジャコウネコを指します。つまり、ジャコウネコ・コーヒーとなります!、、、、まだ意味がわからない方もおられると思うので詳細をご紹介します。普通に紹介してしまうと面白くないので、実際にコピル・アクが登場したとある映画を引用します。管理人も大好きな映画「最高の人生の見つけ方(The Bucket List)」のワンシーンです。

 

 “世界で最も希少なコーヒー、コピ・ルアク。ただ、その真実は俄には信じがたいものだ。コーヒーの果実が育つスマトラ島のある村には、野生のジャコウネコが生息している。この猫は熟したコーヒーの果実だけを選んで食べ、消化し、、、フンをする。村人はそのフンを集め、洗い、加工する。コーヒー豆がジャコウネコの体内で発酵されることで、コピ・ルワク独特の風味と香りを生み出すのだ。”

 

 もうお分かりいただけましたね、そうコピ・ルアクとはジャコウネコの「う💩ち」コーヒーなのです。もちろん、う💩ちをドリップしたものがそのまま口に入るといったようなものではありませんのでご安心ください(笑)

 

バリ島ウブドのコピ・ルアク

コピ・ルアクが飲めてジャコウネコに会える場所

 コピ・ルアクはスマトラ原産ですが、バリ島のウブドでもコピ・ルアクを飲むことができて、さらにジャコウネコを実際に見ることができるお店もたくさんあります。主要なところでは「Alas Harum Bali(以下、写真左側)」と「Jineng Sari Luwak Coffee Tegalalang」などがあります。今回は管理人が実際に行った「Bali Pulina(バリ・プリナ)(以下、写真右側)」をご紹介します。

 

 

 ウブドに行くとわかるのですが、地域一体がコピルアクを全面的に押し出した観光をしているのでとても分かりやすいです。GoogleMapを調べてみると、このほかにも同じような店舗がいくつか表示されますが、すでに廃業となっているお店や休業日となっているお店もいくつかあるので注意してください。

 

【外部リンク】AlasHarum Baliの場所を確認する(GoogleMap)

【外部リンク】Jineng Sari Luwak Coffee Tegalalangの場所を確認する(GoogleMap)

【外部リンク】Alam Sari Agrotourismn の場所を確認する(GoogleMap)

【外部リンク】 Bali Pulinaの場所を確認する(GoogleMap)

 

Bali Pulinaのコーヒー生産見学

 バリ・プリナ(Bali Pulina)は入場無料(2023年10月現在)のコーヒー農園兼カフェです。コーヒーの木の植え付けから採取、乾燥、焙煎過程までスタッフから一通りの説明(現地語)を受けることができました。

 もちろんお目当てのジャコウネコにも会えます。訪問した時は檻がいくつかありましたが、3匹だけ見る事ができました。目が大きくて、とても可愛い。猫よりひとまわり大きいくらいでしょうか。夜行性なので、日中に行くと寝ていることが多いらしいです(笑)。

 

 そしてこれがジャコウネコの「う💩ち(写真左)」です。ジャコウネコの食べたコーヒー豆がほぼそのまま出された感じですね。洗浄した後に下処理に入ります。洗浄して下処理が終わると乾燥の段階に入ります(写真右)。

 

 

BaliPulina でコピ・ルアクを飲む

 ひと通り説明を受けた後、高原を望むデッキにてコーヒーを実際に飲む事ができます。木々が茂っているので絶景とまではいきませんが、涼しい風が吹く中でコーヒーが楽しめるというなんとも贅沢な時間です。ちなみにここではコピルアクが一杯600円程度という格安な値段で飲む事ができます。

 

 

コピ・ルアク生産の裏側

 最後に、このコピ・ルアクにまつわる悲しい現実をお伝えしておきましょう。この記事を書いた理由はここにあります。

 もともとコピ・ルアクは希少性の高さがその価値を押し上げていました。なにせ野生のジャコウネコのフンを回収しなければそのコーヒーを飲む事ができなかったわけです。密林の中からフンを探すわけですから、その希少性は極めて高いということが分かるでしょう。しかし、悲しいかなそこに目をつける人が出てきてしまいました。その人たちは野生のジャコウネコを捕獲して飼育し、ひたすらコーヒー豆を食べさせ、コピ・ルアクの生産量増加を図ったのです。

【外部リンク】幻のコーヒー「コピ・ルアク」の取扱中止アクション

 

 本来、ジャコウネコはフルーツなども食べて生息しています。それを人間の都合でひたすらコーヒー豆だけを食べさせられ、そして狭い檻の中で生活させているという現実が今もまさに起こっているのです。確かに現地の人がそのようなことをしてしまう理由はわかります。というのも、インドネシアの平均月収は4万円と言われています。そのほか、1日の収入が数百円という貧困層も国内の数%を占めます。そんな中でたった数百グラムのコーヒーが5000円になると言われたら人々の気持ちがなびかない訳がありません。

 現在はただの商品だけでなく観光資源としても多くの需要があるコピ・ルアクですが、動物保護団体が声を上げるようになりました。日本でも国内の販売業者に取扱の中止を求める通達がなされたようです。その趣旨は「本当のコピ・ルアク」について理解し、「正しい消費行動」を求めるというものです。俯瞰してみると先進国が持ち込んだ問題に思えてなりません。いわゆる「南北問題」です。お金、ひいては人々の生活か、それとも生物保護か。そんな複雑化した状況はかえって踏み込むのにも勇気がいるように思います。

 

おわりに

 コピ・ルアクについて色々と紹介してきました。美味しいコーヒーのおかげで幸せな時間を過ごせている一方で、このような悲しい出来事があったということを私たちは知らないといけません。

 コーヒー好きとしては「世界からコーヒーがなくなったら困る!」と思いながらも、コーヒーを栽培することの難しさ、加工処理の大変さについて全く理解していません。一杯のコーヒーで海外のコーヒー生産者にどれだけの利益がもたらされるのかも。コピ・ルアクも同じですね。

 私たちはもっと身の回りの物の生産者、特に農林水産業に関しては生活を支えてもらっているという考えを持ち、さらにその方達が報われるシステムを作っていく必要があります。皆さんも、ぜひ「今ある当たり前」を見直す機会にしてみてはいかがでしょうか?

-インドネシア・ライフ, 環境教育