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インドネシアの街並みと生活環境

 この記事では環境教育に関わる者の目線でインドネシアの道路事情についてまとめています。開発が進む首都圏だけでなく、地方都市や観光では入ることがないであろうその裏路地の様子まで紹介しているので、実際に住んでみないと分からないインドネシアのことについて知っていただけたらと思います。

はじめに

 インドネシアの首都ジャカルタには仕事や観光などでたくさんの人が訪れます。人の多さはもちろん、道路の渋滞に日本仕様の地下鉄など、昔ながらの途上国のイメージを全く感じさせない街です。すでに多くの人がテレビやネットを通じてインドネシアの都市化が急速に進んでいことを知っていることでしょう。

 一方で、途上国ならではの問題は依然として山積みだということを知っていただきたくてこの記事を書きました。ジャカルタの街を見上げてみると高層ビルや大型ショッピングモールが乱立しています。その景色にはただただ圧倒されるわけですが、目を下に向けるとインドネシアが抱える問題も見えてくるのです。

 あくまで日本との比較になってしまいますが、建築技術や各設備の安全への配慮、環境衛生への意識といったことについてはまだまだといった感じがします。実際に生活をしてみて気付かされることは非常に多いですので、そういった細かな違いについて知っていただければと思います。では早速写真とともにその様子を紹介していきます。


首都ジャカルタの道路事情

ジャカルタの幹線道路

 開発が著しいジャカルタ。ジャカルタの幹線道路は2〜3車線程度ありますが、常にごった返している状況。高速道路網はまさに今も拡大中で、地方都市から毎日たくさんの車の流入があります。鉄道やバスの利用者もとても多く、駅やバス停が混雑するのも日常茶飯事です。写真からも高層ビルの多さや整備された街の様子がわかるかと思います。東京や大阪と比べても遜色ない気がします。

【写真1枚目】スナヤン(Senayan)地区、アジア・アフリカ通りからスナヤンシティを望む

【写真2枚目】ドゥク・アタス駅(MRT沿線)からBNI ・シティ駅(KAI沿線)を望む

【写真3枚目】ジェンデラル・スディルマン通りからグランド・インドネシア方面を望む

 観光で訪れるような場所はどこも綺麗に舗装されていているので、行き来するには全く支障はないでしょう。幹線道路はMRT沿線と並行して走っているので、観光の方がこのルートから大きく外れることはないはずです。街並みを楽しむのに、実際に歩いてみるのもいいかもしれませんね。ジャカルタではこの幹線道路でカーフリーデーが定期的に設定されています。時間は早朝から午前中だけですが、その日だけは多くの歩行者がウォーキングを楽しみます。ただし、この幹線道路沿いにはほとんどコンビニがありません。ジャカルタは年間を通して非常に暑いので、少し歩いてみようと思う方はしっかりと飲み物を準備しておきましょう。

 

ジャカルタの裏路地

 さて、次に裏路地を見ていきましょう。開発が進んでいる地域から少し離れると、車の通りも少なくなり、小さな家が立ち並ぶエリアが広がります。同じジャカルタですが、先程の開発が進んでいた場所とは雰囲気が全く異なります。インドネシアの街は都市計画はほぼ無いような形で開発が進められていて、行き止まりの道もたくさんあります。実際にGoogle Mapでも見ていただけると一目瞭然なのですが、ジャカルタ市内であっても幹線道路を除けば道路がぐにゃぐにゃと曲がっていて散策には本当に不向きな街です(笑)。

【写真1枚目】幹線道路から300mほど離れた道路を散策。歩道には露店が並んでいるので歩道が使えない状態。

【写真2枚目】幹線道路を一本外れた場所にある住宅エリア。舗装中の道路には注意喚起のための標識や照明などは設置されていなくて危険。

【写真3枚目】街中のあらゆる場所に見られるポイ捨てゴミ。清掃員がいない場所では、ゴミが山積みになっていることも。

 ジャカルタの道路というのは幹線道路のような整った道路だけではありません。というよりはむしろ、インドネシアの方々にとっては無秩序に広がる道路こそ市民の生活道路といえます。コンビニが増えてきたとはいえ、伝統的な形式の小売店も根強く利用されています。人々はそこで飲み物や軽食をとったりします。昼食後の時間帯に訪れてみると、楽しく談笑している現地の人々の様子がうかがえます。

ジャカルタ散策の注意点

歩道が、、、 

 ここで重要なことを紹介したいと思います。それは「インドネシアの人は歩く習慣がない」ということです。そのため、歩道が整備されているエリアというのは本当に限られているのです。例えば、歩道があっても破損が著しかったり、段差がかなり大きかったり、歩道に露店が設置されていて歩道が使えないことが多々あります。車道に降りて歩くというケースも頻繁にあるため、事故には十分に注意が必要です。道に街灯がない場所も多々あるので、日が暮れてから移動する場合にはできるだけ明るい道を選びましょう。

信号機が、、、

 もう1つ、日本との大きな違いは「信号機がない」ということです。街自体が歩行者を想定した作りになっていないので、信号機はほぼありません。地方都市では歩行者は手をあげて横断するのですが、やはり危ないので慣れていない方にはおすすめしません。横断歩道もほとんどありませんので、幹線道路を歩いて横切るようなことはほぼ不可能と思ってください。幹線道路を横切りたい場合には、道路中央に設置されているバス停に渡るための歩道橋を利用するか、高架になっている場所を探すしかありません。私の記憶が正しければ、ジャカルタ市街地の幹線道路で信号があるのはグランド・インドネシアなどのショッピングモールがあるエリアだけです。車やバイクの往来がとても多いので、接触を含めて交通事故には十分に注意してください。

【写真1枚目】スナヤン地区のショッピングモールから南に100mほど行った場所。露店が歩道を塞いでいます。

【写真2枚目】同じくスナヤン地区。露店でサテ・アヤム(焼き鳥)を焼いています。あたり一面にいい匂いがします。

【写真3枚目】グランド・インドネシア最寄りのバス停。中央分離帯に設置されていて、反対側にも同じく3車線+バス専用道路があります。

地方都市の道路事情

地方都市の幹線道路

 近年の開発により、ジャカルタから周辺の都市に交通網が急速に広がっています。ジャカルタでは人口の過密が問題となっていたため、今でもベッドタウンなどの開発が進められているのです。高速道路も建設されましたが、有料であるため市民の方々の利用頻度は高くありません。その結果、地方都市の幹線道路では常に渋滞が発生するという問題を抱えています。朝や夜の決まった時間帯には必ず渋滞が生じます。通常、スカルノハッタ国際からジャカルタ市内へは40分程度で移動できるのですが、渋滞に巻き込まれると2時間かかることもあります。

【写真1枚目】ジャカルタから南に10kmほどの街の幹線道路。東西に走る道はどちらに行くにも渋滞している。

【写真2枚目】踏切で停車中の車内から撮影。車の隙間を埋めるようにバイクが電車の通過を待つ。

【写真3枚目】明け方の幹線道路。街灯は点灯しておらず、車のライトのみが道を照らします。

【写真4枚目】日本でもお馴染みのイオンモール。高速道路のジャンクションや駅の近く、新興のベッドタウン付近にも多いです。

【写真5枚目】道路脇に設けられた簡易の小売店。飲み物やお菓子を提供していますが、衛生的に心配なのが問題点。

【写真6枚目】通称ワルンと呼ばれる飲食店で、作り置きの料理を選んで食べることができます。幹線道路沿いにたくさんあります。

 地方都市であってもジャカルタと同じで歩行者を想定した街の作りにはなっていません。「歩行者用の道」という概念は人々にはないのです。歩道があると思って歩いて行くと徐々に歩道の幅が無くなっていて、すぐ脇をバイクがガンガン通り抜けているなんていう場所も多いです。車と車の隙間を縫うようにバイクが走り抜けていくので、歩行者との距離も必然的に近くなります。たまに歩道を突っ走っていくバイクもあります。交通ルールに関してはあってないようなものと考えた方が身のためです。

 

地方都市の裏路地

 大型ショッピングセンターが増えてきても、人々の生活圏のベースとなっているのは街の路地裏にある小売店や飲食店です。クリーニング店や薬局、場所によってはスーパーマーケットもあり、必要なものが近場で全て揃うような街の作りになっています。

【写真1枚目】路地裏の様子と小売店(奥)。道は舗装が行き届いておらず、砂利を敷き詰めただけの場所も多い。

【写真2枚目】街の至る所にあるモスク。大きさは様々だが、朝・昼・夕などの決まった時間帯に人々が礼拝に集まる。

【写真3枚目】SUPER INDO。日本でいうマックスバリューのようなスーパーです。

【写真4枚目】比較的開けた道路沿い。歩行者はほとんどいないはずなのに山積みのゴミ。汚れ具合からも長い期間放置されていることがわかります。

【写真5枚目】家屋のすぐ隣に捨てられたゴミ。通行人のポイ捨てとは考えにくい場所なので、不法投棄的に家庭ゴミを捨てていると思われる。

【写真6枚目】地域の方が利用するサッカー場。この場所で小さな子供たちが裸足で遊び回ることもある。見ているこちらがヒヤヒヤしてしまいます。

 

どこに行ってもこれは気をつけよう

街灯が、、、

 ジャカルタの幹線道路のところでもふれましたが、やはり地方都市でも街灯の整備は進んでいません。所々にあるコンビニや露店の明かりを頼りに進むしかありません(【写真1枚目】)。それでも十分な明るさはあるのですが、停電した場合には一瞬で街が暗闇に包まれます(【写真2枚目】)。停電は頻繁にあるものではありませんが、いつ何時起こるか分からないことでもあるので夜間の外出については慎重になる必要があります。停電中はいつも明るいコンビニの店内が真っ暗になります(【写真3枚目】)。

雨が降ると道が、、、

 道路自体が整備されていないところが多いです。道路脇には側溝のようなものがありますが、実はこれは排水施設ではありません(【写真1枚目】)。地元の人が勝手に作った貯留池みたいなもので、日本のように川に流れ出るような仕組みにはなっていないのです。そのため、雨が降ったりすると当然水が溜まりっぱなしとなり、道は水で溢れかえります(【写真2枚目】)。晴れている時には気付かないのですが、スコールの後にいつもの道を通ると「道がない!?」「どこを歩けばいいの?」なんてことが多々あるので気をつけなければなりません(【写真3枚目】)。ちなみに現地の人は基本的にバイク移動ですし、歩いていても必ずサンダルを履いています。革靴を履いていない理由はこんなところにもあるのです。



最後に

 インドネシアの首都ジャカルタと地方都市の道路事情について紹介してきました。発展が著しいといわれるジャカルタでも、まだまだ開発自体が行き届いていないということに気づいていただけたのではないでしょうか。表向きには開発が進んでいても、安全性への配慮や機能性の面ではまだまだと言えそうです。

 ゴミのポイ捨ても同じです。ポイ捨ての習慣がなかなか改善されないのですが、都市部の主要幹線道路沿いだけは清掃されていて比較的キレイな状態です。しかし、ジャカルタの脇道や地方都市の幹線道路・路地裏というのはまだまだ財政的に余裕がないため清掃が行き届きません。ゴミの回収システムと廃棄物処理の設備が整っていないことも原因ですが、やはりそういった点も未成熟なのです。

 観光地だけを巡っていると、このような事実にはなかなか気づけないものです。というより、インドネシアに来てわざわざそのようなことを考えながら観光することなんてありませんので仕方のないことです。ただ、日本を含めた先進国が廃棄物の処理を途上国に丸投げしていた時期があるということも事実です。せっかく海外に来るのであれば、改めて「日本の生活水準の高さとそのありがたさ」を知り、「途上国の現状」について理解を深める機会にしていただければと思います。

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