青年海外協力隊

青年海外協力隊の選考・審査〜基準ってあるの?〜

 この記事は青年海外協力隊の選考・審査基準に関する情報をまとめたものです。これから協力隊に応募しようとしている方、これまでに協力隊を志願しながら不本意な結果になった方、今まさに選考の最中で対策を求めている方はご一読いただき、参考にして下さい。

はじめに

 青年海外協力隊は長きにわたって実施されている国家的事業といって差し支えないでしょう。年間を通して数百名規模の隊員が途上国に派遣されています。「とりあえず海外で仕事をしてみたい」「自身の経験を途上国のために役立てたい」「国際協力の分野で新しい一歩を踏み出したい」など、志願される方の理由は様々ですが、選考を勝ち抜いた人だけが現地での活動の場を与えられます。職種にもよりますが、年間2回の応募には志願者がたくさんおられますので、この記事を通して選考を勝ち抜くための参考にしていただければと思います。

 

選考基準ってあるの?

選考基準について考える

 最初に明確にしておきましょう。青年海外協力隊の選考は、応募者の人格や技能、経験など様々な要素を総合的に判断して合否を決定します。そのため、明確な選考基準は公表されていません。ただ、応募者というのは基本的に「(大学時代などに)海外での生活経験」があったり、「ボランティアに魅力を感じている」という方が圧倒的に多いです。そのため、アピールポイントがしっかり練られた内容になっていないと、他者との違いが明確に伝わりません。そう考えると、ライバルたちに差をつけるための「自身の強み」をいかに伝えるかということは大切だと言えるでしょう。

 以下、管理人が把握している「合格者の傾向」をもとに大事なポイントについてまとめてみようと思います。

 

人柄・性格について

 合格者の方々を見ていると、一定の傾向があるように感じます。それは「外向的」「社交性」です。

 主観的でざっくりとした表現になってしまいますが、これらの言葉が最もしっくりきます。見ず知らずの人達と活動することになるので、人との関係を上手に構築できる人、そして部屋にこもってしまうのではなく、「とりあえずアクションを!」と自ら行動できる人が求められます。これが「外向的」という言葉を用いた理由です。また、意見の対立を含めて、自分と異なる考え方の人と接したときに、臆することなくコミュニケーションが取れるかどうかも重要です。日本だと「自己主張が強い」と人に避けられることもあるのですが、協力隊に関しては人と関わる力=「社交性」は必須と言えます。

 言い方を変えると、積極性や協調性といった言葉でも同じかもしれません。ただ、合格者の人たちはとても逞しい印象を受けますし、ほとんどの合格者の方々はそれらを備えています。そしてこの人間像はJICAが求めている人間像と大きく重なります面接官には、これらを具体的にアピールできるエピソードを考えましょう。

語学力について

 語学力に関しては「要請にある情報」が大前提となります。各要請には「求められる語学力」が明記されていますので、もしも特定の要請にこだわって応募するのであれば、その語学力を備えていなければ審査をパスできません。ただ、要請も様々ありますので要請内容や職種、派遣国などに関して特に希望がないのであれば、語学力が求められていない要請に応募することで語学力が不安材料になるという事態は避けることができます。

 国ごとに挙げるならば、スペイン語圏、インドネシア語、モンゴル語、アラビア語圏、タイ語あたりを使う派遣国では英語のレベルは問われないことが多いです。参考にしてみてください。

 

健康基準について

 これが最もわかりやすく、そして厳しい審査基準でしょう。重篤な罹患歴(もしくは再発可能性)がある人、慢性的な病気を患っている人、もしくはその前段階で経過要観察(特定の項目)といった状態の人が協力隊の審査をパスするのは非常に厳しいでしょう。これは私個人の意見になりますが、生活習慣病はもちろんのこと、生活習慣病を招く可能性のある症状があるのであれば、審査の通過は難しいと思った方がいいです。具体的に挙げるとすれば、糖尿病、高血圧、低血圧、脂質異常、そのほか臓器に関わる疾患(もしくは数値の異常値)などです。派遣基準を満たしていないと判断される可能性がありますので、自覚のある人はできるだけ改善に取り組みましょう

 健康審査が厳しい理由は明確です。なぜなら、現地での厳しい生活に適応できるか保障できないからです。コロナの流行期に全く派遣が実施されませんでしたが、JICAが隊員の健康管理についてかなり慎重なのが分かります。リスクの伴う派遣は許可されないということです。このように考えると、健康というのが重要な審査基準の1つであるというのも頷けまず。ちなみに合格者の方々を見ていても自己管理ができている人しかいません。肥満傾向の人はほどんどおらず、日常的な運動習慣がある人ばかりです。

 ただ、一部例外の方もおられるようです。病名・症状等の明記は避けますが「完治が困難とされていても、自身の管理で症状がコントロールできるもの」、また「上肢欠損」も隊員として派遣経験のある方はおられます。派遣職種とその業務内容によると思いますので、その点に関して不安があれば事前に問い合わせても良いかもしれません。

 

専門的な知識

 これも職種による内容で一概には言えません。ただ、全体的な傾向としては専門的な技能・経験がない状態で派遣されている方は意外と多い印象です。新卒や社会人経験2年ほどで合格されている方も一定数おられます。該当職種で言うと「環境教育」「コミュニティ開発」「青少年活動」が典型的です。高校や中学の先生が「小学校教育」で派遣されているケースもあるので、職務経歴書に記載した「ある特定の事業(職種に関する仕事)に関わっていた経験がある」というだけで、審査をパスしているということですね。実際、合格者の方と話してみても、何か特別な経歴があるかといえばそうでもありません。大切なのはやはり「何をどのようにアピールするか(上で説明済み)」ということになるでしょう。もしご自身に専門的な知識がないことを不安に思っておられるようでしたら、職種の選択肢を増やしたり、アピールポイントが合致する職種で検討されるのも良いでしょう。

 一方、技能職は対照的な状況です。具体例としては「自動車整備」「PCインストラクター」「日本語教師」「理学・作業療法」などでしょうか。日本でも専門職と言われる職種は経歴が求められます。そのため、技能職に応募する際にはくれぐれもご自身の職務経歴を考慮して応募してください。倍率は低くなるのですが、進路開拓のような形で協力隊への参加を考えている人には不適な職種でしょう。

 

海外渡航歴について

 筆者自身は学生時代に韓国や中国などアジア圏の渡航歴があったので、キャリアシートや面接では経験をもとに自身の考えを述べることができました。海外渡航歴がある方はご自身の経験に基づいてご意見を述べられたら問題ないでしょう。

 では海外渡航歴の経験がない方はどうすれば良いか。実は海外渡航歴がなくても問題ありません。というのも、協力隊で大切なのは「異文化を持つ集団に所属することになった時、あなたならどのようなことに気をつけますか?」ということだからです。

 日本でも同じことは多々ありますね。「意見の合わない人がいたらどのように接するか」「意見が食い違う複数の集団をどのようにファシリテートするか」が述べられたら良いわけです。面接官が知りたいのはあなたの海外渡航歴の有無ではなく、考え方の柔軟性であったり多様性を享受する力、環境への適応力があるかどうかということです。

合格を勝ち取るために

職種ごとの倍率

 技能の専門性でも触れたように、ご自身に専門的な技術や職歴があれば専門職で応募した方が合格率は高くなります。競争相手がかなり少ないからです。一方、専門的な技能が求められない職種は高倍率になる傾向があります。先ほども紹介した「コミュ開」「環境教育」「青少年活動」などです。ただ、少し見方を変えると職種も広がります。例えば、農村部の開拓に関わったことのある方なら「コミュ開」だけでなく「野菜栽培」も可能です。教育関係者なら「障害児・者支援」「小学校教育」「環境教育」も可能性としては十分あり得ます。

経験と隊員としてのビジョン

 海外渡航歴の欄でも紹介しましたが、「◯◯をしたことがある」という「経験」はそれほど重要ではありません。求められるのはその経験の中で「何を感じたのか」、そしてその経験を踏まえて「何をこれからしたいか」というビジョンを持つことでしょう。また、「そのビジョンをどのように現地の人のために具体化していくのか」を説明できることも大切です。実際の審査(面接)で私も聞かれました。「派遣されて1年経ったとき、あなたはどのような表情でどんな活動をしていると思いますか?」と。おそらくこれは私のビジョンを相手(面接官)と共有するための質問だったのではと思います。これに答えられる人は「何をしたいのか」をすでに考えている人だと思います。まだピンときていない人は考えてみることをおすすめします。「自分に何ができるのか?」を掘り下げて考えてみてください。

失敗談は大きなアピールポイント

 面接では多くの人が「自分ができること」をアピールします。あなたが面接官ならそれをどうみるでしょうか?おそらく「またか」とうんざりするのではないでしょうか?

 ここで協力隊の本質に顧みていただきたいのです。「協力隊に求められているのは現地の人とともに考え、ともに作っていく活動」だ、ということです。現地の人たちは隊員に教わるためにいるのではありませんし、ただ日本人のノウハウがわかればそれで良いという人たちでもありません。もしあなたが「◯◯を完成させたい」「◯◯を身につけさせたい」といったような独りよがりな姿勢を面接で出してしまうと、合格は手の届かないものになってしまう可能性があります。これは技能職でも同じことが言えます。現地の人の実態を把握し、受け入れ、悩みをともに改善してく活動が求められています。

 大切なのは「寄り添う姿勢」だと言えます。そこで、面接ではあなたが失敗した経験を面接官に臆することなく話して欲しいのです。もちろん失敗談だけでなく、その後どのように立ち直ったり、改善に取り組んだのかも紹介してみてください。きっと、面接官は現地に派遣されたあなたの姿を想像してくれるはずです。

おわりに

 青年海外協力隊の審査についてまとめてみました。明確な基準というよりは、合格するための対策や考え方について紹介する感じになりましたが、いかがだったでしょうか。

 近年、海外志向がいっそう強くなったこともあるのでしょう。たくさんの若い世代が協力隊に応募しています。派遣されている隊員を見てみても、20代半ばから30代前半が中心となっていて、そのエネルギーに圧倒されるばかりです。やはり行動力が違います。発信力もあって、人を巻き込んでいくのもとても上手な方が多いです。そのような方々と行動を共にするというのはとても贅沢な経験だと感じます。もし応募しようか迷っているなら、説明会などに参加したり、帰国した隊員に話を聞いてみるのも良いでしょう。そして応募する際にはこの記事がお読みいただいた方の力になれば幸いです。

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