この記事ではインドネシア首都圏における河川の汚染について紹介しています。世界でも大々的に発信されてきたインドネシアの水質汚染。少しずつ改善されつつあるとはいえ、課題は山積みです。今回はインドネシア首都圏の河川の「今」について知ってただきたいと思います。
はじめに
この記事ではインドネシア首都圏の河川事情についてまとめてみました。環境問題が深刻なインドネシアですが、水質汚濁も例外ではありません。水質だけなら目に見えないものなので気づかなさそうですが、ポイ捨てがあまりにも多いのです。そのため「見るからに汚い川」が多いのです。はじめて川を見たら、「これは川なの?」と聞きたくなるくらい日本の川とは情景が異なります。インドネシアの人にとっての川は、日本人にとっての川と同じ感覚ではありません。今日はその点にも少し触れてみようと思います。では早速紹介していきましょう!
ジャカルタ首都圏の河川〜チサダネ川〜
今回写真を使うのはジャカルタ首都圏の西側を流れるチサダネ川です。地図も載せておきましょう。スカルノハッタ空港の西側から「赤い破線」で示したものがチサダネ川の主流となります。流路自体は地図外になりますがボゴールという街から北上、そして海へと流れます。図中のタンゲラン市、南タンゲラン市を流れる形になりますが、このタンゲラン市と南タンゲラン市がジャカルタのいわゆる衛星都市であり、ベッドタウンとなっています。現在も人口の増加が著しい街であり、ゴミ問題に悩まされている街でもあります。
私もこのエリア内で生活しています。既に半年が過ぎましたが、街を歩いてみるとたくさんの川があることに気づきます。人々にとって川は比較的身近な存在だと言えるでしょう。最近だと水辺にカフェがあったり、公園も整備されたことで憩いの場として認知されつつあります。下にいくつか写真を載せますが、公園などの公共施設も人と水との関わりを考慮した作りになっていることが分かります。
【写真(上):Taman Kota2 BSD(筆者撮影)】
雨季にはたくさんの水が流れていた河川も、乾季になると水量が大きく下がります。ジャカルタ近郊では乾季の間は本当に雨量が少なくなります。やや南に下った山間部に位置するボゴールという都市では急激な雨が降るようで、その水が首都圏を潤しているといった感じでしょうか。
上の写真にある川の色は濁っていますが、周辺も含めて整備されているのでインドネシア国内でいえば「キレイな状態」です。この段階ですでに「キレイ」の意味合いが大きくずれ始めた人がいるのではないでしょうか(笑)。ここからが本番ですよ!
いよいよインドネシアらしくなってきました。上の2枚の写真は河川の主流ではなく、街中を流れる用水路の写真になります。ただ、これらの用水路は全て河川へと流れ出る構造になっているので、溜まったゴミや濁る原因となる生活排水は全て主流への流れ出るということになります。人々の生活圏を通るこのような用水路は何本もあるので、その数だけゴミや汚染物質が蓄積されるということです。
世界で最も汚いと言われた川〜チタルム川〜
チタルム川はジャカルタの東側を流れる河川です。実際に目で見たことはないのですが非常に有名な川となっています。有名な理由は、かつて世界銀行の「世界で最も汚れた川」として宣言された(2008年)からです(※1)。
【引用】 ※1 AFP BB News 「世界で最も汚染された川」 水質改善に本腰 インドネシア(2018掲載記事)
「世界で汚い川」と言えばインドのガンジス(Ganges)川、米国のミシシッピ(Mississippi)川、中国の黄河(Yellow)らしいのですが、それと同じように必ず名前が挙がる川だというのです。では実際に写真も引用させていただきましょう。
「なんでこんなことになるの?」と驚かれる方も多いでしょうが、残念ながらインドネシアだと普通の光景です。かつて川は人々にとってゴミ捨て場でした。そして、その状況が少しずつ改善されたとは言え、一部の人は川に廃棄物を投棄しているのです。
ちなみにこのチタルム川、汚いと言われたのはゴミの量だけではありません。工場からの排水が流れ出ているため有害な化学物質を含んでいます。その一部には「アメリカの安全な飲料水の基準の1000倍の鉛」が含まれているとのことです。これらの水を一般家庭で何かしらに活用しようとすることは自殺行為に等しいと考えて良いかと思われます。
引用した記事によると、「政府は本腰を入れて水質改善に取り組む」とされていますが残念ながらそれは実現していないと言って差し支えないでしょう。もちろん、有害物質量の数値は改善されているかもしれませんが、ゴミの量はやはり多いです。少なくとも、お世辞にも「キレイ」になったなんて言える状態ではないでしょう。
おわりに
筆者はこれまで、少しでも多くの情報を得るべく直接川までいって写真を集めました。残念ながらチサダネ川の岸壁もチタルム川と同じ状況だと言えます。写真を載せますが、ゴミが岸壁に溜まっている様子がわかっていただけるでしょうか?
この川、川幅100m超とかなり広いので川辺まで下りることができません。岸壁も補修されていないので、洪水があると大変なのではと思ってしまいます。大雨が降ったら、これらのゴミが行き着く先は、、、、。先が思いやられます。
また、近所にもいくつか小さな支流はありますが、依然としてゴミを捨てる人を実際に見ます。ごみ、ほんとに多いです。
場所によって違いがあるかもと思っていましたが、おそらくこの状況はインドネシア国内全てで共通しているのではないかと思います。人々の習慣が変えていく必要があるのです。ただし、そこには多大な時間を要します。知識を得ることから始まり、自ら行動し、他者に対しても発信していける人材を育てていかなければいけないのですから。また、他の記事でも繰り返し述べていますが、ゴミ回収の根本的なシステム構築も喫緊の課題です。
「一気に解決できたら!」なんておこがましいことは言いませんが、これだけのゴミが溜まりに溜まったら、「子どもたちにどのような環境を残すことになるのか?」は考えて欲しいものです。それを大人たちに伝えていくのが今の自分の仕事なのかもしれません。