青年海外協力隊の応募を検討している方は多いのではないでしょうか?「海外で生活ををしてみたい」「国際協力に興味がある」という方には選択肢の1つになることが多いようです。一方で、実際に応募しようとするときに、選択肢となる「要請(現地での活動内容)」はとても多く、「どれを選べば良いのかわからない」とか、派遣を終えた後に「他の国にしておけばよかった」と思う人も一定数いるのは間違いありません。そこで今回は、「要請」の選び方についていくつかのポイントを紹介しようと思います。
もくじ
要請って何?
そもそも要請とは?という方のために確認しておきます。
要請とは青年海外協力隊を志願する人が「どの国に、どのような仕事内容で派遣されることを希望するか」を決めるためのもので、いわゆる求人票のようなものです。そのほかにも、派遣国での生活環境(電気、ガス、通信の利用状況)やともに仕事をすることになると想定されている方々の情報(性別、学歴)が記載されています。青年海外協力隊のホームページでも概要は確認することができるので、しっかりと目を通しておきましょう。
要請の選び方
要請を見てみるとあまりの多さにびっくりされる方も多いことでしょう。国の数もさることながら、職種の数もかなり多くなっているので漠然と見ていると何も決められません。迷ってい方がおられるようであれば、以下の点を参考にしてみてください。以前に職種に関する記事を書きましたが、派遣されてみて気づくことも多いです。そこで要請を決めるにあたっていくつか参考になるだろうと思われる手順と、その際の注意点を紹介していきます。
職種を決めよう!
要請の選択肢を絞っていくには、まず「職種」を見ていくことをおすすめします。海外に派遣されるためには審査をパスしないといけません。その審査では「職種に関する知識や技能が問われることになる」ので、ご自身の能力や経験が要請(派遣される国のニーズ)に合致するが重要です。
とは言いつつも、審査される際に聞かれる専門性や技能の高さはかなり「ゆるく」なっているのが現状と言えます。「ゆるく」というのは、専門的な知識がなくても派遣されている方がそれなりにいるということです。
例えば、「教育」というと「学校関係者」や「啓発」に関わってきた経験がある方が求められているかのように思われます。ところが、民間の企業でも「プレゼン」や「円滑なコミュニケーション」は業務として当然経験があったり身に付けているはずです。要請の実態も実はその程度で、何かしら貢献できそうな技能を持っていれば問題なしと判断され、その結果「人前で話せればOK」なんていう極端な形で派遣に至っている方もいるのです。合格者本人いわく、「どうして合格できたのかわからない」と言っているほどです。
むしろ現地に行ってしまえば、斬新な発想が必要な場合もあるのかもしれないません。そういう意味で、職種の専門性(条件に職務歴を求める一部の要請を除く)というのは審査でのアピール次第でなんとでも言えるのかもしれません。記事の後半で職種に関する注意点には触れますが、実は職種についてはあまり執着しない方がいいです。
派遣国を決めよう!
次に大切なのは「派遣される国がどこか」です。「好きな国」や「行ってみたい国」で決める方が多い筈です。文化や自然環境を実際に見てみたいという考えで国を決める方もおられます。もちろんそれは良い方法であると言えます。2年間も滞在するので、関心のある国でないと生活していくのはとても大変です。
派遣国に関しては自分の興味・関心で決めれば良いので、もし職種にこだわらないという場合には国だけを先に決めてしまい、その国の中で自分に当てはまる職種を探すのも良いでしょう。
もう1つの要素として、「言語」で決めるという方法もあります。
2年間の滞在であれば言語はそれなりに身につけることができます。帰国してからの自身の人生の強みになるので、語学留学と捉えることもできます。生活資金は支給されるので、その点ではとても有意義な時間と言えるでしょう。
例えば「スペイン語」であれば、南米のほとんどの国が選択肢となります。マレーシアでは複数の公用語があるので、マレー語はもちろんのこと、英語を学ぶ機会がある国です。「アラビア語」であれば中東やアフリカ大陸北部といった具合です。
インドネシアではまだまだ英語は浸透しておらず、若い方(今の大学生くらい)だけが不自由なく使える印象です。一方、インドネシア語は汎用性がないので「インドネシアの今後の経済成長を見越してビジネスをしたい」と考えている人にとっては価値があるかもしれないと言える言語ではあります。
要請選びの注意点は?
職種にこだわりすぎない
この点については特に注意が必要です。というのは、以前の記事でも少し触れた内容なのですが、要請に書かれている業務内容はかなり取り繕った内容になっているからです。実際に行ってみたら「全くやることがない」なんてこともザラにあります。それを理由に任期短縮して帰国される方もそれなりの数になっています。これを聞くと、「職種を前提に派遣国を決めたのに全く意味がなかった」ということになります。悲しいかな、それが現実です。
要請に書かれている派遣先のニーズの捉え方について、例を挙げてみます。
「◯◯(エリア)では□□(施策)を推進しているが、▲▲が課題となっている」といった文言があった場合、「◯◯(エリア)では▲▲が課題となっている」ことだけが事実と考えた方が良いです。つまり、手段である「□□を推進しているが、」の部分は、全く進められていない可能性があったり、すでに他の方法に切り替えられていることもあるのです。「▲▲が課題となっている」ことすら認知されていないなんてこともあり得ますね。そう考えると、間違いないのは働くのが「◯◯(エリア)」ということだけになります(笑、そしてこれもよくあるパターン)。
だから、要請の捉え方としては「課題になっている▲▲に対してどうアプローチするか」を提言できれば良いと考えましょう!
国や地域にはこだわろう!
職種がいい加減な要素なのはお分かりいただけたと思うので、国や地域にはしっかりこだわりましょう。長期の滞在ですし、人生で何回も経験できることではありません。妥協をするべきではないのです。後悔しないようにするために、国選びはとても重要です。
例えば、「どうしてもラオスに行きたい」だけど「今年はラオスの要請がない」という場合、あなたならどうしますか?
他の国にする?
ラオスの要請が出てくるまで待つ?
個人的なアドバイスをするならラオスにこだわった方がいいです。自分の行ってみたい国に行きましょう!
南米の国々(チリやペルー)であれば言語は同じで文化はそれほど違わないといったことは聞いたことがあります。しかし、ラオスとカンボジア、マレーシアとインドネシア、タイとベトナムなど、近そうな国であっても言語や文化は全く違うので、行きたかった国の代わりになってくれる国はないのです。ちなみにタイに行ったら全く何が書かれているのか分かりませんでした。
【言語の違い 似てるけど違うタイ語(左)とクメール語(カンボジア)(右)】
マレーシアとインドネシアは関係性が良くないということもあります。個人の生活であればそれほど影響はないのかもしれませんが、同じことは国や地域でもある筈です。アフリカや中東圏は宗教上、または政治上でも注意が必要なエリアかもしれません。
もともと行きたかった国に近いからといって赴任国を決める(「カンボジアに行きたかったけどベトナムへ」など)のはいい決断とは言えません。
ご自身が派遣国に求めるのは何ですか?
文化体験?旅行?言語?
今一度それをしっかり考えてから希望する派遣国を決めましょう!
注意点のまとめ
貴重な2年間にするために、「職種」と「国選び」以外の大切なことにも触れておきます。これまで特に考えていなかったようであれば、以下の点も参考にしてみてください。
現地の食生活について
食事が合わない地域で生活するのは難しいです。主食が何で、どのような料理を食べることになるのか、あらかじめ把握しておいた方がいいでしょう。もし日本食の調理方法にこだわるとしても、日本と同じ調味料が手に入るのかどうかなども確認しておくほうがいいです。
インドネシアでは油物の料理が多いです。自身で調理することはもちろん可能ですが、日本の調味料は割高で贅沢品に分類されます。毎日日本食を作るならば、それなりの費用を投じることになります。生野菜を食べる機会が限られるので、それに不満を持つ隊員は一定数います。
インフラについて
水、電気、通信などの日本では当たり前のインフラが整備されていない国は依然として多いです。例えば、要請に「電気あり」「水あり」など書かれていたとしても、停電が頻繁にあったり、通信の分断は月に1回程度起こると考えていた方がいいでしょう。
特にアフリカの一部エリアでは水を自分で汲みに行く必要があるケースなども想定されます。水の配達サポートがあるはずなのに、全く配達がされないなんてこともあるようです。日本ほどしっかりと仕事をする国は他にありませんので、日本の生活をベースにしてはいけないのですが、ライフラインに関してはトラブルは多いそうです。実際に生活をしてみないとわからないことが多いので、やはり情報が必要です。
「関わる人」について
現地では本当に多くの人と関わります。「隊員」「事務所スタッフ」「配属先スタッフ」「現地の人々、隣人」などです。応募を考えていたり派遣を待っている段階であるならば、現地にはどのような人がいて、どのような交流があるのかを知っておくことは重要でしょう。常に1人で行動するのは不安になりますし、問題が生じた時には協力してくれる人がいるかどうかは大切な情報です。
例えば、隊員同志の交流が活発にあるかどうかは国によって大きく異なるようです。国土が小さな国では頻繁に会えるようですが、島国や国土の広い国では隊員同士の交流は希薄になる傾向があります。
また、「事務所スタッフ」にも様々な人がいます。協力的な人がいれば全くそうでない人もいるようで、国によって事務所のあり方・制度もかなり違います。協力的な事務所である方が業務のサポートがスムーズに受けられるので、こういった情報も現役隊員に尋ねてみるといいでしょう。ともに仕事をする現地の方々も日本人に合わせてくれるような方々なのか、それとも一方的なコミュニケーションになりやすい土地柄なのかどうかといったことも2年間を充実させるために大切な情報ですね。
総じて大事なことは「事前の情報収集」です。行ってから後悔しないように、現時点での現地の様子を把握しておきましょう!!
ちなみに現役隊員はX(旧ツイッター)やFacebook、インスタグラムなどを使って発信している人が多いです。JOCVや職種の名前、青年海外協力隊で検索してみると良いでしょう。
おわりに
今回は「要請の選び方」をテーマとしてまとめてきました。これから応募を検討される方にとって「職種にこだわりすぎないこと」や「派遣国に何を求めるのか」を考えていただく機会になれば幸いです。
また、情報収集の重要性についても繰り返し触れました。応募の段階で与えられる情報とは本当に一握りです。また、要請が作成された時とはタイムラグがあって、実際に派遣されるタイミングの情報とは大きく異なることもよくあります。そのため、応募をしようと考えている人だけでなく、審査に合格して派遣訓練に入る前の方々、そして派遣を控えている方々にも常に情報を得るということをしてほしいと思います。
情報収集によって実態が分かれば、応募する国を変えたり、職種を変えるということができるでしょう。訓練前・訓練中や出発前であれば準備できることも増えるはずです。この記事で少しでも多くの方が良い派遣を迎えてくださることを期待します。