環境教育

いかに分別を進めるか?〜インドネシアでのコンポストの意義〜

 今回は環境教育を進めるために実施してきた活動の第一弾として「コンポストの作成」を紹介します。コンポストというと日本ではすでに知られている有機廃棄物の処理方法です。しかし、日本ではゴミ処理システムが確立されていて、それほど活用の意義が浸透していないと言えます。ところがインドネシアではゴミ処理プロセスが確立していないので、その普及にはとても重要な役割があると言えます。この記事を読んでコンポストの意義について考えていただけたら幸いです。

 

はじめに

 今回はコンポストの重要性についてまとめていきます。先に少し触れたように、コンポストは有意廃棄物(生ゴミ)を処理するためのもので、すでに多くの国で知られている手法です。ゴミの回収システムや処理システムが確立されている国では、それほど重要視されているとは言えませんが、インドネシアにおいては特に重要な手法であると言えそうです。この記事ではそのことについて紹介をし、国の状況に応じて適切にコンポストを普及させる必要性について知っていただきたいと思います。

 

コンポストの重要性と課題

インドネシアでコンポストが重要である理由

 インドネシアで分別が進まず、分別の意義が浸透していかない理由については過去の記事で紹介をしました。

 インドネシアの廃棄物問題〜TPST〜

 結局のところ、最終ゴミ処理場では全てのゴミが同じ場所に埋め立てられています。つまり、いかにごみ収集のプロセスで分別されていても、最後には同じ場所で同じように処理されているということです。これでは人々に分別に意義が伝わらないのも仕方がありません。

 分別をする際には目的と手段を明確に示す必要があります。例えば、有機廃棄物や紙とでは土に還るまでにかかる時間が異なります。またビン、缶はそもそも分解されなかったり、プラスチくは有機廃棄物とは比べ物にならないくらい分解までに時間を要します。このことを踏まえ、燃えるゴミは燃えるゴミとして、プラスチックや缶ゴミなどの不燃物として適切な処分やリサイクルが行われなければなりません。ゴミ処分は意図した方法で処分をすることが大切なのです。

 しかし、残念ながらインドネシアの現状ではそうはなっていないません。そのため、「ゴミが生じる段階(家庭)」から「最終ゴミ処理上で埋め立てられる段階」の処理過程の中で、できることは何かを1つ1つ考えて処理に取り組む必要があるのです。これを行うことで最終ゴミ処理場に持ち込まれるゴミの総量を減らし、かつ分別を進めることができると想定できます。

 このように考えたとき、有機廃棄物がコンポストによって処分されているとしたらどうでしょうか?ラマダン(断食)などを行う彼らにとっては、飲食はもちろん、飲食を通しての人との出会い、出会った人との会話など、全てがとても大切なことです。インドネシアが人口3億人に迫る国です。もしそのゴミが少しでもコンポストによって減らすことができるのなら、と期待してしまうのも無駄なことではないように思います。各家庭でできるゴミ処理のプロセスとして、コンポストがいっそう普することは望ましいことなのです。

 

インドネシアでコンポストが普及しない理由

 コンポストの意義とインドネシアでの可能性についてはご理解いただけたでしょう。その一方で、現実をみてみるとなかなか各家庭への普及には至っていません。コンポストの普及活動が始められて20年以上になるはずです。もちろんゴミ処理拠点にコンポストを設置している自治体はあるようですが、各家庭での普及という点で言えばむしろその数は少なくなっているようにも思います。

 

 ではなぜインドネシアの家庭でコンポストが利用されないのでしょうか。いくつか原因を考えてみました。

①面倒臭い+時間がかかる

 1番の原因はこれでしょう。インドネシアの国民性と言っても容易かもしれませんが、長期的に継続して取り組むことが苦手なようです。すぐに結果を求めるという言い方をしてもいいかもしれません。そのため、ゴミが分解されるのを待たなければいけないコンポストというのはなかなか大敵なのです。分解を促すために暖かい場所におくなどの配慮も必要なので「どうしてお金にならない作業に神経を使わなければいけないのか」という考えになるのも致し方ありません。ポイ捨てが多い原因もこの点と重なるように思います。

 

【写真左:空き地にはポイ捨てされたゴミ山  写真右:ゴミ処理場内のコンポスト】 

 

②設置場所に困る

 毎日排出されるゴミはそれなりの量になります。したがって、コンポストも比較的大きなものになってしまいます。住んでいる家がそれほど大きくない場合には、コンポストのために場所を取らないといけません。生活する上では不便な状態となるため、コンポストの設置に意欲的になれないというのも頷けます。

 

インドネシアでコンポストを普及させるには?

 面倒くさいことや設置場所、そしてインドネシアの人々の習慣や国民性を踏まえ、インドネシアでコンポストを普及させるにはどのような方法が良いのでしょうか。今の段階でできそうなことをいくつかあげてみます。

 

①村落単位での実施と啓発

 インドネシアでは村落単位の繋がりがとても強く残っています。これはモスクが村落単位で設置されていて、お祈りのたびに人々は顔を合わせたりするからです。コーヒーやお茶を一緒にのだりしながらおしゃべりするのも近隣の人たちです。その村落単位でゴミ処理について考えたり、実際に取り組むというのは非常に有効であると感じます。

 すでに村単位でごみ収集が行われているところもあれば、そうでないところもあります。これから実施される場合であれば、住民を対象とする啓発も同時に進めることができます。その際にごみ収集拠点でコンポストを実施できれば、わざわざ各家庭でコンポストを設置する必要もなく、住民1人ひとりがコンポストを所有する必要もありません。

 

【写真左:地域のゴミ処理啓発施設(通称ゴミ銀行)  写真右:ゴミ処理施設内のコンポスト】 

 

②学校教育での実施と啓発

 もう1つの可能性としては教育機関での指導です。ゴミの分別に関わる知識の指導にはじまり、実際に分別を体験したり、コンポストを使って有機物の分解プロセスを理解させるということです。また、校庭には広いスペースがあるため、コンポストの設置場所としては申し分ありません。

 インドネシアの中で環境教育が実施されている自治体はいくつかあります。その学校で環境教育が実施されている場合、中核の役割を担っているのは「生物」を専門とする教員です。コンポストの設置は教育のための設備として一役買うでしょう。子供たちに環境教育を進めることで10年後、20年後のインドネシアに大きく貢献することにつながるはずです。

 

 

おわりに

 インドネシアでのコンポストの意義についてまとめてみました。実際に現地に来てみると、環境教育に関して啓発をするなかで様々な問題を突きつけられます。現地の人々の生活に馴染まない。あるいは実施したいけどお金がないなど、切実な問題も多いです。その1つ1つに配慮しながら改善を加えていくので、相当な苦労が強いられるのです。特にお金にならない仕事になるので、関わる人が限定的になってしまいます。これもインドネシアで環境教育が進まない要因の1つと言えそうです。

 コンポストついてはまだまだ可能性がありそうです。各家庭に任せきりになってしまうと上手くいかないということは指摘しましたが、次のステップとしては、例えば各家庭が協力できる体制を築き、ゴミ回収ができる組織や集団が形成されれば進展する可能性があります。これまでの取り組みでは「コンポストがダメ」と言い切るのはやはり時期尚早です。インドネシアの社会や文化に適応するにはどのようなアプローチが可能かという視点で新たな方法を模索することで、新たな効果がみられるかもしれません。

 コンポスト以外にも様々な取り組みがなされています。もしそれが上手くいかなかったとしても、その手法が間違っているという視点だけでなく、何がミスマッチなのかを考え直すことで課題が改善される可能性が出てくるでしょう。ぜひ参考にしていただければ幸いです。

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